子宮頸がん
子宮頸がんは子宮の入口付近に発生するがんで、
20~40代の比較的若年女性にも多くみられます。
その原因は、HPV(ヒトパピローマウィルス)の感染です。
主に性交渉で感染します。
したがって性交経験のある女性なら誰でもかかる可能性があります。
尚、正常の細胞がいきなりがん細胞に変わるわけではなく、
異形成(異型細胞)という状態を経てがん細胞になります。
異形成には軽度、中等度、高度と3段階あり、さらに上皮内がんという状態があります。
そしてその先が1期のがん(最も進行の進んでいる状態が4期)です。
子宮がん検診は異形成または上皮内がんの状態を見つけることで、
進行癌になることを阻むことが目的です。
子宮頸がんの検査では、子宮の入り口(頸部)から細胞を採取します。
結果判定はベセスダ分類という分類方法に従い、
NILM、HSIL、AGCなど、アルファベット表記で判定されます。
NILM以外は精密検査の対象となります。
精密検査ではコルポスコピーという検査が行われます。
さらに海外ではHPV検査を併用することで、
子宮頸がんのリスク判定に役立てられています。
検診目的でのHPV検査は健康保険が適用されませんので自費にはなりますが、
当院でもその実施が可能です。
コルポスコピー検査・生検について
対象者
子宮がん検診(子宮頸部細胞診等)により、子宮頸部異形成やがんを疑われた方が対象です。
具体的には結果表記が「NILM」以外であった方と、「ASC-US」でヒトパピローマウィルス(HPV)が陽性だった方です。
検査の内容
コルポスコピーという拡大鏡を用いて、子宮頸部を詳細に観察します。
病変と疑われる部位があれば、子宮頸部から米粒の半分ほどの組織を
1~3か所程度切り取って検査に出します。
これを生検といいます。
痛みも通常はそれほど大きくないため麻酔の必要はありません。
コルポスコピー・生検ともにそれぞれ5分程度かかります。
生検の偶発症
出血、稀に感染があります。
出血に対しては、止血剤の粉末を採取部位に塗布し、綿球またはガーゼ挿入による圧迫止血を行います。
縫合や電気メスでの凝固による止血を行うこともあります。
感染予防、止血のため、抗生物質や止血剤が処方されることがあります。
検査前の注意点
月経前1週間と月経期間を避けて実施します。その他食事などは普段通りでかまいません。
検査中は時計やアクセサリーなどの金属類は外していただく必要があります。
通常は検査後も普通の診察の後と同様に帰宅できる程度の検査です
生検まで行った場合、数日間は少量の出血や色のついたおりものが出ることがあります。
再出血の恐れがありますので、生検を行った場合は下記を遵守してください。
- 飲酒:検査当日は禁止。
- 入浴:検査当日はシャワーのみ。出血が少なければ検査翌日から可。
- 自転車・激しい運動:検査当日より3日間禁止。
- 性交渉:検査当日より1週間禁止。
ヒトパピローマウィルスについて
HPVはヒトの皮膚や粘膜に存在する、ごくありふれたウィルスです。
イボを作るウィルスです。
この中で子宮頸がんの原因となるものは「発がん性HPV」と呼ばれています。
発がん性HPVに感染しても90%以上は自然に体内から排出されますが、
感染した人の中のおよそ10%の女性がウィルスを排除できずに
感染が長期化(持続感染)してしまうことがあります。
その場合子宮頸がんの前がん病変(異形成)が生じたり、
長い年月を経て子宮頸がんへと進行することがあります。
150種類以上あるHPVには、
がんを起こしやすい高リスク型と起こしにくい低リスク型があり、
高リスク型(発がん性)HPVの持続感染があると
子宮頸がんが発生する危険性が高まります。
子宮頸がんの原因となる高リスク型HPVは約13種類(16型、18型、31型、33型・・・など)で、
HPV16型と18型が最も多く見つかっており、発がん性も強いことがわかっています。
HPVワクチンについて
子宮頸がんは、ワクチンで予防できる数少ないがんです。
乳がんと子宮頸がん、どちらも女性を苦しめる病気ですが、
残念ながら乳がんには有効な予防法がありません。
定期接種は小学6年生~高校1年生に該当する年齢の女性が対象ですが、
当然それ以上の年齢の方にも効果があります。
副作用
副作用の疑われる報告などが相次ぎ厚生労働省は積極的な接種勧奨を差し控えています。
しかし国内外での調査の結果、それらの副作用と考えられた症状は、
子宮頸がんワクチンによるものとは証明されませんでした。
日本産科婦人科学会、小児科学会、ワクチン学会など国内15の学会が
共同して子宮頸がんワクチン接種を推奨しています。
世界保健機関(WHO)も強く推奨しています。
推奨していないのは、学術機関ではない厚生労働省のみです。
WHOはこの現状に危惧を抱いています。
大鳥居医院はワクチン接種を推奨しております。
日本で使用可能な子宮頸がんワクチン
子宮頸がんの原因となるHPV16型,18型に加え、
尖圭(せんけい)コンジローマなどを起こすHPV6型,11型感染も予防する
4価ワクチンがこれまで主流でした。
2020年に、その他のハイリスクHPV感染予防にも有効な9価ワクチンが
日本でも利用可能になりました。
大鳥居医院の考え
子宮頸がんの大半はワクチンにより予防でき、
さらに子宮がん検診を受ければ早期発見により根治可能なケースも多いのです。
当院は予防接種と、年に1回の子宮がん検診を推奨致します。