りんご病
妊婦健診をしていると、
「上の子が先週りんご病になって・・・」
と相談を受けることがあります。
りんご病そのものはお子さんにとっても大人にとっても、
健康に大きな影響が出るというものではなく
多くの風邪と同様に対症療法で症状が改善するのを待つだけとなります。
有効なお薬や予防のためのワクチンもありません。
しかし妊婦さんがりんご病になると、お腹の中の赤ちゃんが苦しくなってしまうことがあります。
特に妊娠20週未満でなってしまうと、赤ちゃんに影響が出る恐れがあります。
この点が、通常の風邪と大きく異なる点です。
りんご病は頬がリンゴのように真っ赤になる特徴的な症状からそう呼ばれています。
これを蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)と言います。
原因はパルボウイルスB19です。
幼児から学童を中心に、春から夏にかけて流行がみられることが多いです。
くしゃみで放出される唾液などから感染します(飛沫感染)。
潜伏期間は7~14日間で、気づかないうちに感染していることもあります。
感染の機会から1週間程度、軽度の感冒症状・関節痛のみで済むこともありますが、この時期にもっとも感染力を有します。
感染から14日以降にみられる蝶形紅斑は、感染した人の30%にみられます。
しかし紅斑出現時にはすでに感染力は消失していることが多いようです。
したがって蝶形紅斑が出てから「りんご病か?」と疑った場合、
それから隔離やマスク着用を含む何らかの対策を講じても、時既に遅し、ということになります。
それ以前に「りんご病かも!?」と疑うのは難しいですね・・・。
だって、感染初期の症状は普通の風邪と同様なのですから。
傾向的には数年ごとに流行がみられますので、
流行が確認された時は慎重に感染対策を講じるしかありません。
とはいえ、上のお子さんとの濃厚接触は不可避ですよね、可愛すぎて・・・。
我々産婦人科医としては、
「上の子が先週りんご病になって・・・」
という相談には積極的に応じます。
お腹の赤ちゃんへの影響がないか、慎重に見ていきます。
相談を受けたらまず妊婦さんの採血をして、
感染がなかったかを判断します。
いつ検査をするかですが、疑い次第速やかにです。
次の2週間後の妊婦健診を待って・・・、という必要はありません。
先述の通り、蝶形紅斑が出るのは感染の機会から2週間後です。
ママが無症状のこともありますし、
お子さんに蝶形紅斑が出ていたらその時は既に検査すべき時期です。
結果判明には2~4日程度要します。
この検査で感染が判明した場合、
注意深く観察していく必要があるのは、お腹の赤ちゃんです。
ママに症状が出ていたとしても、おそらく既に改善傾向にあるでしょう。
普段の妊婦健診で行うエコー検査では、主に赤ちゃんの大きさをみています。
だいたい2~4週間ごとに妊婦健診を行いますが、
母体の感染が明らかな場合、1~2週間毎に赤ちゃんをみていくことになります。
大きさだけでなく、赤ちゃんの体のむくみがないか、胸やお腹に水がたまっていないか、頭の血流をみて貧血がないか、
などをみていくことになります。
もし、異常が確認されれば高次医療機関で胎児治療を受けてもらうこともあります。
あとは自費の検査になってしまうのですが、
IgGという抗体を調べることで、
過去に感染したことがあるかどうかが分かります。
りんご病は2度かかることはないので、
過去に感染していたこと(IgGが陽性で免疫があること)がわかれば不安が解消されます。
逆にIgGが陰性ならば、より慎重な感染対策を取る判断材料になります。
流行時期にご不安が強ければ、この検査を検討しても良いかもしれません。